HIRONO ASSOCIATES


works
  土間の家 photo gallrey REPORT
2000-2001

土間の家 details
浜松市西区大山町 専用住宅・木造2階建 延床面積152.84㎡(46.23坪) 施工/分離発注+幸田建築(木工事) K-MIX静岡スタイルspring.2001(P88,89)掲載 2000/08竣工


北外観

屋根/GLカラー鋼板一文字葺き
外壁/アイカジョリパット吹付、一部土塗り壁クシ引き
巾木/灰墨入モルタルくし引き

「日本古来の空間」と「自然の素材」に、こだわった家。



アプローチ外観

道路沿いに緑の配置をし、周辺の景観向上にも考慮。
アプローチの床は階段状に枕木を敷き込んである。
玄関正面は、竹のスクリーン。



エントランス

正面が土間に入る玄関戸で、右側は竹を30cm間隔に
スクリーンとして使用している。
床は色土モルタル。
巾木は灰墨入モルタルくし引き



LDと和室からつながる縁側

天気が良い日はここで家族そろって食事をとる。
縁側の前は庭と大根畑。



玄関から入った土間

右側が玄関戸。
正面の棚はしっくいの壁をへこませてある。
床/色土モルタル
壁/しっくい塗り
天井/杉板貼



土間から見たLD

下部は下足入で引き出し形状になっている。



土間から続くLD

正面がこの家の中心である大黒柱。
左側が対面式キッチンで業務用の厨房機器を使用。
床/ヒノキ板貼
壁/しっくい塗り
天井/杉板貼



吹き抜けのLD

構造材は全て杉材を使用し、内壁はしっくい塗り。
空気を対流させるために天井扇を付けている。



LDから見上げた2階の夫婦寝室

風の流れを考慮して建具は基本的に引き戸を使用。
途中で切れた梁からダイニングのペンダントを吊るしている。



和室から見たLD

これらの障子を開けると縁側につながる。
ブルーの笠のダイニングのペンダントは
アンティークショップにて購入した昭和初期のもの。



階段から見たLDと奥の和室

右側がキッチンスペース。



1階の和室

床/3尺角ヘリ無タタミ市松敷き
壁/しっくい塗り
天井/ヒノキ板貼
照明器具は北欧製のレ・クリント



第4案の最終模型

この家は分離発注形式で建てました。
分離発注形式は、建設費の低減、腕の良い職人さんの
選択等の利点があります。

「設計コンセプト」

「ずっと畑の広がる地元に暮らしてきたので、自分が建てる家も、その環境をうまく生かした土間や
大黒柱のある家に住みたいのです。」
「歳月を積み重ねて風格が出る家こそ本物でしょ。道具だって同じだと思います。
照明器具、ドアの取手など全てにこだわりたいです。」

クライアントと最初に会った時の言葉である。

「日本古来の空間」、「自然の素材」をテーマにした家の設計が始まった。
以下にこだわった点を掲げてみた。

01. 材料は地元産の杉を使用
02. 色土モルタル押さえの土間
03. 大黒柱Φ240(8寸)
04. 土塗り壁くし引きの外壁
05. ガルバニウム鋼板一文字葺きの屋根
06. 灰墨入りモルタルくし引きの巾木
07. ムクの桧の床
08. 内壁のしっくい塗り
09. 天井の杉板貼
10. 杉板貼の広い縁側
11. 枕木を敷き込んだアプローチ
12. 大きな吹き抜け
13. 業務用ステンレスキッチン
14. 和紙のあかり、アンティークの照明器具
15. コインモザイクタイル使用の浴室
16. 木製の便座
17. 陶器製、木製、ガラス製のドアノブ
18. 竹の目隠し
19. 駐車場はレンガを砕いたものを使用
20. 琉球表のタタミ敷き

平成12年の夏、打合せから始まって3年がかりで「土間の家」が完成した。
各職人さんは、施主と直接契約する「分離発注」を採用した。
これによって建設費の低減、腕の良い職人さんの選択が可能となった。
施主、職人さん、設計者等、みんなで力を合わせ、こだわって建てた家だ。
いつまでも大事に住み続けて欲しいと願っている。

「土間はギャラリーである。」

浜松市 N邸

K-MIX静岡スタイルspring.2001(P88,89)より抜粋

 枕木を敷き詰めたアプローチに歩を進めていくと、どこからともなくお香の香りが漂ってきた。
玄関を開けると、そこには土間が広がっていた。色土のモルタルで押さえられたその空間は、
土間というよりギャラリーの趣さえある。ここに奥様の眼にかなった物が飾られると、
ひとつひとつの物が途端に存在感を増すのだろう。

 「ずっと畑の広がる地元に暮らしてきたんで、自分が建てる家も、その環境をうまく生かした土間や
大黒柱のある家に住みたいと決めていたんです。」

 大きくせり出した杉板の縁側もこの家の特徴だ。この縁側は家の中でもあり、また畑へ通じる
外の空間でもある。天気の良い日には縁側で家族そろって食事をとる。

 そんなNさんご夫婦はあくまでも本物にこだわりたいという。
では何を持って本物というのか。彼らは口を揃えていう。

 「歳月を積み重ねて風格が出る家こそ本物でしょう。道具だって同じだと思います。
ランプひとつも建築家といっしょにアンティークショップを探し回りましたからね」

 そしてそのランプを設置するにも電気屋さんに任せっきりというわけではなかった。
分離発注をし、電気屋さんにも直接施主が希望を伝えた。

 この方法によりNさんのこだわりがいかされることとなった。
たとえば、業務用のシステムキッチン、木の便座、磁器製ドアノブ、玄関に施された竹の目隠し、
和紙の灯り、浴室のコインモザイクタイルなどすべてそれぞれの業者に対して、
施主と建築家がタッグを組んで分離発注した結晶なのだ。

 「分離発注というのは当然時間と手間がかかりますよ。でもその分、望みは叶えられるんです。」

 友達が遊びに来て、そのままごろりとこの居間に寝ころんだまま朝を迎えることもあるという。
嬉しいような、困ったような・・・。


分離発注業者一覧

木工事・他/幸田建築
左官・タイル工事/㈲一佑
建具・家具工事/野中建具製作所
電気工事/㈲和久電気
庭工事/庭好
業務用厨房工事/㈱トーカイ設備機器部 浜松営業所